【『独り暮らしは2年まで』】

これは、独身生活が長すぎる男性への警告の言葉である。 我々生物の本能には、食欲や性欲と並んでもう1つ、集団欲がある。多く の種は群生して命をつないでおり、人間もその例外ではない。だが、現代社 会ではこの自然の摂理を忘れて、人との会話よりパソコンや携帯電話のやり 取りに夢中になるなど、人とのかかわりが希薄になっている傾向がある。

しかし、こうした孤立しがちな暮らしは、とりわけ独身男性にとっては、 健康や寿命にも少なからず影響があると言われている。

例えば、1995年に40歳の男性の平均余命を調べた国立社会保障・人口問 題研究所の統計によると、離婚した男性は妻と死別した男性に比べると、そ の余命が6.2年短いことが分かった。つまり、妻の死亡という不可抗力の原 因は別として、生き別れの場合、男性はその後、いつまでも独り暮らしでい るのは、寿命にも響くというショッキングなデータである。

医学的にも「対象喪失」と言って、大切なものを失うと、人は鬱状態に陥 って、なかなか立ち直れないことも分かっている。特に、不幸の後の1年以 内は要注意で、心筋梗塞などにかかる確率も高くなっている。

こうした事実を基に考えると、男性の中でも中高年の場合は、2年以上の 独り暮らしは避けることが望ましい。それがかなわぬ場合は、せめて、孤独 を分かち合える友人を持つことだ。英国の哲学者、フランシス・ベーコンは 「真の友を持てないのは全く惨めな孤独である」と言っている。

[出典:日経ビジネス、2008/03/10号、志賀貢=医学博士]

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