【漬物は腸力を鍛える】

徳川家光が、沢庵和尚が開山した品川の東海寺を訪れた時のこと。家光は 珍しい食べ物はないかと沢庵に尋ねた。「珍しいかどうか分かりませぬが、 貯え漬け(たくわえづけ)という香の物があります」。沢庵が大根の漬物を出すと、 家光はこの漬物が気に入り、「これからは沢庵漬けと申すがよかろう」とその名前を つけたという。
残念ながら、これは俗説。大根を漬ける時の重しが沢庵和尚の墓石に似て いたので、その名がついたという説もある。案外、これが真相かもしれない。
漬物は、奈良時代に発達した草醤(くさびしお)から生まれている。草醤は、ウリ、ナス、 青菜、大根、桃、杏などの野菜や果実を塩と酒粕、または麹を加えて漬け込 み、発酵させたもの。ヨーグルトと言えば、乳酸菌などの善玉菌が有名だが、 発酵食品の1つである漬物も乳酸菌が豊富で、日本人にとってはヨーグルト のようなものだ。
実は、漬物などの発酵食品に含まれる善玉菌が腸内細菌叢を整え、日本人 の腸と健康を守るのに一役買ってきた。免疫に関わる器官は胸腺などいく つかあるが、人体最大の免疫器官は腸。免疫の大きな役割を担っているリンパ 球は、6割が腸にある。腸の働きが活発であれば免疫力も高く、病気になり にくい。その腸の働きを左右しているのが腸内細菌だ。日本の長寿者の腸内 細菌叢が良いのは偶然ではない。
昔は漬物を食べるだけでなく、糠をお湯に溶いて飲んだ。これは現代の乳 酸菌飲料のようなもの。糠に漬けた漬物を食べる時は、あまりゴシゴシと洗 わない方が賢明だろう。
[出典:日経ビジネス、2008/02/25号、堀田宗路=医学ジャーナリスト]

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