【無病息災、大豆のカ】

「鬼は外、福は内=。節分の日には、そう声をかけながら、炒った大豆をま く。まいた大豆は後で拾って、自分の年の数だけ食べ、その年の無病息災を 願う。節分の鬼(悪霊)を払う行事はもともと宮中で行われていたものだ が、それが簡略化して江戸時代に庶民の間にも普及した。浄瑠璃作者として も有名な江戸の才人、平賀源内がペンネームを「福内鬼外」(ふくうちきない)としたのも、節 分が普及していた何よりの証拠だ。
なぜ大豆をまき、年を取れば取るほど食べなければならないのか。ここに 日本人の深い知恵を見る思いがする。大豆こそ、無病息災を象徴する食物だ からだ。大豆食品は、既に様々な健康作用があることで知られているが、近 年また新たな作用が見つかった。大豆たんばくには、βコングリシニンとい う成分が豊富に含まれている。メタポリックシンドローム(内臓脂肪症候群) の人がこの成分を2〜3カ月食べたところ、アデイポネクチンが増えた、と 日本肥満学会で報告されたのだ。
アデイポネクチンとは、ホルモンの一種で、この分泌が減ってくると糖尿 病、高血圧、高脂血症、動脈硬化、これらを併せ持つメタポリックシンドロ ームなどの病気になりやすい。おまけに、ガンの発生率も2〜3倍に跳ね上 がる。
内臓脂肪がたま一つてくるとアデイポネクチンが減り、健康長寿な人ほどそ の量が多いことも分かっている。この長寿ホルモンは内臓脂肪を落とせば増 えてくるが、大豆でも増やせる。年を取れば取るほど大豆を食べると、まさ に「鬼は外、福は内」なのである。

[出典:日経ビジネス、2008/01/28号、堀田宗路=医学ジャーナリスト]

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