【“メタボ”は腎臓にも負担】

公私ともに忘年会が続いて、体重が増えてしまったAさん(50歳)。
最近話題の“メタボ”も心配だが「肥満は腎臓にもよくない」という 話を開き、気になっている。

来春から始まる特定健診の1項目となるメタポリックシンドロー ム(内臓脂肪症候群)。男性で85cm以上、女性で90cm以上という腹囲周径 で高血圧や高血糖、脂質異常症を合併した場合、心不全や脳卒中といった心 血管病のリスクが高まることを知っている人は多いだろう。だが、メタポリ ックシンドロームが透析のリスクも高めることはご存じだろうか。
メタポリックシンドロームはCKD(慢性腎臓病)発症のリスクも高める ことが分かってきた。日本のある調査では、メタポリックシンドロームの人 は、CKD発症の危険度が2.2倍に高まるというデータもある。このCKD を悪化させると、透析が必要になるというわけだ。
CKDは2002年に米国で登場した疾患概念だ。これまで腎臓病は、糖尿病 性腎症、慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎と分けて考えられてきた。だが、こ れらがいずれも透析や心血管病のリスクとなることが明らかとなり、統一の 概念の下に治療を行うことが必要と考えられるようになったのだ。
CKDが進行すると、透析や腎臓移植が必要になるのはもちろんのこと、 CKDそれ自体も、血圧や脂質異常を悪化させる因子であることが分かって きた。メタポリックシンドロームとCKDとは、相互に強い関連があるの だ。
しかも、CKDは屏息者が多い。現在、日本では1000万人から2000万人程度 の患者がいると考えられている。透析は経済的な負担も大きく、現在CKD を催思している人が、透析が必要にならないよう治療を行う意味は、医療経 済の観点からも大きい。
かつては「腎臓は一度悪くすると治らない」と考えられてきた。だが現在 では、症状が軽いうちは、レニン・アンジオテンシン阻害薬と呼ばれる新し い薬が登場したことで、治療できるようになっている。
問題は、CKDがほかの腎臓疾患と同じく、初期のうちは自覚症状がない ことだ。悪化すると全身の倦怠感や息切れ、食欲不振などの自覚症状が現れ るものの、自覚症状が出てからでは、治療の効果も望みにくい。
CKDは、微量アルプミン尿やたんばく尿などの尿異常から徐々に悪化し ていくため、早期の診断には血液検査や尿検査が不可欠となる。ただし、ほ かに体調の異常がない場合、その頻度は年に1度程度で十分だ。会社の定期 健診をきちんと受診するようにすればいいだろう。
腎臓の負担を軽減するためには、まずはメタポリックシンドロームの改善 と同様に、生活習慣の改善が重要だ。具体的には禁煙と肥満の解消、減塩が ポイントとなる。ただし、男性の場合、1日に日本酒1合程度までの適量のア ルコールについては、CKDを悪化させないとされている。
(談話まとめ:山崎大作=日経メディカル)

[出典:日経ビジネス、2007/12/24・31号、飯野靖彦=日本医科大学第二内科 (腎鹿内科)教授]

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