【前立腺ガン検査は受けるべき?】

今年55歳になったMさん。
友人が前立腺ガン検査を受け、値が高かったと心配している。 自分も一度、調べてみた方がよいのだろうか。

前立腺は膀胱の出口付近の尿道を取り巻くようにある、 クルミ大の臓器。精液の一部である前立腺液を作る働きをしている。 この前立腺にできるガンが年々増加しており、2020年には、 肺ガンに次いで男性のガン罹患率2位になると予測されている。
理由は高齢化に加えて、前立腺ガンの検査であるPSA(前立腺特異抗原) 検査が普及したことが大きいだろう。PSAは、前立腺液の中に含まれるたん ばく質で、一部が血液中に流れ出ている。前立腺ガンになるとPSAが血液 中に大量に流れ出すため、血液検査でそれをチェックしようというわけだ。
前立腺ガンはよほど進行するまで症状が出ないため、一昔前までは、骨や リンパ節に転移し治療が難しい状態で見つかることが多かった。だが、PSA 検査の登場によりこうしたケースが減り、様々な治療の選択肢がある早期の ガンが増えた。検査は血液を数ミリリットル(mL)採るだけで簡便なため、 最近では自治体の検診や人間ドックに取り入れるところも増えている。
ではどんな人が受けるべきなのか。PSA検査は、乳ガンのマンモグラフイー や大腸ガンの便潜血検査のように、検診としてみんなが受ければその集団 全体の死亡率が下がるという証拠はまだない。そのため、罹患する可能性が 高くなる50歳以上の男性が個々に、検査の特性を知ったうえで受けるかど うかを決めることが推奨されている。
まず知っておきたいのが、PSA検査だけで、ガンの有無が分かるわけでは ないということ。PSAの値は4(ナノグラム/mL=ナノは10億分の1)以下 が正常、10以上ならガンの確率が高く50%以上、そして4〜10のグレー ゾーンの場合は30%程度と言われる。前立腺肥大症や炎症など、ほかの病気 でもPSA値が上がることはあるため、値が高いだけで焦ることはない。診断 にはその後、前立腺を針で刺して組織を取る生体検査(生検)が必要になる。
生検には出血などの合併症が起こるリスクもある。PSA値が4〜10の場合では、 数カ月おきに値の動きを見て、上がり続けるようなら生検に踏み切る という手段もよいだろう。
様子を見ている間にガンが進行するのではないか、と危惧するかもしれな い。だが、前立腺ガンは「天寿ガン」と呼ばれるように、ほかのガンと比べて 進行が遅く、直接の死因になることは少ないのだ。中にはタチの悪いガンも あるので油断はできないが、早期の段階で見つかると、多くは10〜20年か けて死因になるようなガンに進行すると考えられている。
こうした前立腺ガンの性格から、基本的に70歳程度でほかに病気を併せ 持っているような人には検査を推奨しない。ただ、もっと若い人たちは、血 圧測定と同じようなイメージで、健康管理の一環として、PSAの値を把握し ておいてもいいのではないだろうか。
(談話まとめ:末田聡美=日経メディカル)

[出典:日経ビジネス、2007/12/10号、鳶巣賢一=静岡県立静岡がんセンター 病院長]

戻る