【健康欲求をくすぐる“血液サラサラ”】
大抵のものにはメリットとデメリットがある。それを観察する位置によっ
て良くもなり、また悪くもなる。例えば、フリーラジカル(活性酸素)は細胞
や遺伝子・血管を傷つけ、体内を酸化させるので悪者だと言われる。しかし
一方で、外界からのウイルスや細菌の侵入を防ぎ、殺菌・消毒の働きがある
ので、役に立ってもいるわけだ。
またフリーラジカルに対抗する抗酸化ビタミンのβ−カロテンやビタミンE
は、アンチエイジング(抗加齢)の旗手としてもてはやされた。しかし、抗酸
化ビタミンの摂取は総死亡率を上げるという研究報告も相次いだ。さて、ど
こを見て判断するか。
こんな詰もある。コーヒーに糖尿病の予防効果があるという。ただし1日
7杯飲まなければならない。せっせと毎日飲んだからといって、ほかの病気
にならない保証はない。同じく、コレステロールを下げるという臨床データ
を持つ健康食品は、コレステロールは下げたかもしれないが、それが果たし
て疾病の予防や健康維持に貢献したかというと必ずしもイコールではない。
先頃、「血液サラサラ」を売り文句に“健康ブレスレット’を法外な値段で売
りさばいて逮捕された事件があった。「サラサラ」はここ数年来、健康の象徴
となっており、健康食品や健康グッズによく使われる。しかし実際は、血液
の流れと健康や疾患との関係に関する医学的な定説はない。見方を変えれば
「サラサラ」が危険な場合もある。つまり、私たちの体はそれほど単純なもの
ではなく、常にバランスの良さが要求されるということだ。
[出典:日経ビジネス、2007/12/03号、後藤典子=NPO日本サブノメント協会代表理事]
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