【口の健康を“口腔年齢”でチェック】

Nさん(42歳)は、子供の頃から歯科医院が大の苦手。
歯磨きの時にブラシに血がつくのが気になってはいるのだが、 診察を受けるのは憂鬱でたまらない。

歯の汚れは歯と同じ色をしており、汚れが取れているかどうか 分かりにくいものだ。しかも、歯垢(プラーク)は口の中の細菌がただ集まっ ているのではなく、「バイオフィルム」という独特の膜を作っていることが最 近、明らかになってきた。
つまり、簡単に歯磨きした程度では、歯垢は落としきれないということだ。 このことをぜひ念頭に置き、毎食後、磨き残しを作らない正確な歯磨きを心 がけたい。特に、歯の表面だけでなく歯と歯茎の境目も意識して、歯ブラシ を45度の角度に当て、小刻みに動かしながら優しく磨こう。
口の中の問題は、全身の健康にも深く関わっており、軽視するのは禁物で ある。特に、Nさんのように、歯磨きをしている時に出血が見られた場合には 要注意。出血は歯茎に異常な炎症がある証拠なのだ。とは言っても、実際に は歯が痛むなどの症状がない限り、口の中の問題はどうしても後回しにして しまいがちだ。
私は、約10年にわたり産業歯科医として、ある企業の従業員の歯科検診を 行ってきたが、毎年、従業員の歯の状況に大きな変化はなく、検診効果を実 感しにくいというのが現実だった。そこで、口の中の健康にもっと関心を持 ってもらうにはどうすればよいかと考え、10年はど前に「口腔年齢」という 指標を提唱した。
口腔年齢とは、わが国では年齢とともに処置した歯の数が増加していくこ とに着目した指標で、処置した歯と虫歯を除いた、何もしていない健康な歯 の数と、歯茎の状態を総合的に評価して、測定ソフトにより年齢の形で算出 するものだ。
歯茎の状態は、歯と歯茎の隙間にできる歯周ポケットからの出血や歯石、 歯周ポケットの探さなどから評価する。実年齢と比較しながら口の中の状 態を把握できるので、分かりやすい指標だと自負している。
例えば、口腔年齢が実年齢よりもかなり上であれば、頑張って実年齢に近 づけようという励みにもなる。口腔年齢を若く保ち、歯の健康を維持するた めに、習慣的な口腔内のケアが欠かせないことは言うまでもない。
実際、歯科検診の場にこの指標を導入したところ、継続的な受診者の口腔 年齢を、実年齢よりも若いままに保つ成果が得られている。
ただし、口腔年齢は患者さんご自身で調べることができるものではない。 口腔年齢の考え方を導入している歯科医院に行って、歯科衛生士によるチェ ックを受けてもらうことになる。現在は、全国で200近くの歯科医院で導入 されている。
Nさんも、自分の口腔年齢を調べて、参考にしてみてはどうだろう。歯科医 院を受診して専門の口腔ケアを受けることは、毎日の自身の歯磨き方法を見 直すうえでも有意義なはずだ。
(談話まとめ:小又理恵子=日経メディカル別冊)

[出典:日経ビジネス、2007/12/03号、神原正樹=大阪歯科大学口腔衛生学講座教授]

戻る