【健康作りに乗り出した“大衆薬”】
近頃、テレビコマーシャルで“健康と美容”をうたう薬が目につくように
なった。薬と言っても、処方薬ではない。大衆薬改め「OTC医薬品」のこと。
従来の大衆薬は、医者にかかるまでのつなぎか、病院に行くほどでもない軽
度の症状改善を目的に利用されてきたが、その市場は1970年代に下落し、
右肩下がりが続いている。特に昨今は、国民的健康ブームから、人々の関心が
「トクホ(特定保健用食品)」やサプリメントに向いているため、割高感のあ
る大衆薬はますます人気がない。
こうした現状を打破する妙案となるか、46年ぶりに薬事法の改正が行わ
れ、ビタミン剤や整腸剤などのリスクの低いものについては、薬剤師が常駐
しなくとも、より簡便な「登録販売者」が販売できることになる。この規制蔵
和で、大衆薬はコンビニエンスストアや100円ショップにも並び、通信販売
やインターネット販売も可能になる。
ここでの狙いは「セルフメデイケーション」への呼びかけだ。大衆薬の定
義に「生活の質の改善・向上、健康状態の自己検査」といった文言が加わり、
健康維持・増進のサポーターとしての役回りを意識している。もちろん薬品
はその効果をうたえるので、「寝つきが悪い」「お腹の脂肪が多い方に」など
具体的なアピールもでき、臨床試験データを使った広告も許される。
こうした情報は利用者の理解を助けるが、果たして“お薬”は食べ物で培
っている私たちの体にどこまで関わってくれるのか。また食品と異なる添加
物の安全性は、日常的な摂取を想定しているのか、といった疑問も残る。
[出典:日経ビジネス、2007/11/05号、後藤典子=NPO日本サプリメント協会代表理事]
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