【胸痛に負担少ない検査方法】

最近、朝の通勤時に、時々胸の痛みを感じるKさん(53歳)。 病院で心臓カテーテル検査を受けるように勧められたが、 怖いのでそのままにしている。

Kさんのように胸の痛みを時々感じるなど狭心症の疑いがある人 には、通常は入院のうえ、冠動脈を調べるための心臓カテーテル検査(心力 テ検査)が行われる。
心力テ検査では、手首の動脈などからカテーテルと呼ばれる直径2mm程 度の細い管を血管内に挿入し、心臓まで送り込む。そこに造影剤を注入し、 ]線を照射、血管の詰まり具合などを調べる。これは狭心症の確定診断には 欠かせない検査だが、一方で、動脈にカテーテルを直接入れるため出血した り、血液の塊(血栓)ができて脳梗塞を起こすなどの危険性もある。
そこで最近、このようなリスクを伴う心力テ検査を行う前に、正常な人を 除外するためのスクリーニングの手段として、64列マルチスライスCT(コ ンピューター断層撮影装置)を用いた冠動脈造影検査が注目を集めている。
検出器が64列あるこのCTでは、従来の16列CTに比べて撮影速度が高速 化したため、心臓のように動く臓器でも、鮮明な画像が短時間で得ら.れるの が最大の特長だ。
64列CTによる冠動脈の検査時間は1人20分ほど。肺などが動いて画像が ぶれないように10秒ほど息を止め、腕の静脈から造影剤を注入して撮影す る。その後、コンピューターで画像処理を行い診断するが、場合によっては 当日に結果を返すことも可能だ。「陰性適中率」と言って、何も異常がない ことを見つけるための診断精度は高いので、これで狭窄などが見つからなけ れば、心力テ検査を受ける必要はない。
なお、被曝量は、基本的には心力テ検査1回分と変わらない。造影剤アレ ルギーのリスクはあるが、これは心力テ検査についても言えることだ。一方、 動脈に針を刺したりしないので、出血などのリスクはない。入院の必要もな く、狭心症などの疑いがあれば保険が適用される。その場合、検査料も心力 テ検査の3分の1以下で済む。
実はKさんは喫煙習慣があり、人間ドックでは脂質異常を指摘され、血圧 も高かった。接待で夜遅くまで飲むことも多く、肥満で、メタポリックシン ドローム(内臓脂肪症候群)に当てはまる。このように動脈硬化の危険因子 を複数持つような中高年者で、胸痛や心電図に疑わしい所見があるような人 は、64列CTによる冠動脈造影検査の対象になる。ただし、動脈硬化が進ん で冠動脈の石灰化が著しい人や不整脈がある人などの場合、撮影は難しい。
Kさんには64列CTによる検査を受けてもらったところ、右の冠動脈に動 脈硬化性病変を伴った狭窄があることが分かった。さらに、心臓の3D画像 として示された自分の冠動脈の病変を見て、ようやくKさんも心力テ検査の 必要性を理解して入院を決意、治療を受けた。その後、たばこもやめ、食習 慣の改善や運動などに努めており、健康的な生活を取り戻している。
(談話まとめ:瀬川博子=日経メディカル別冊)

[出典:日経ビジネス、2007/10/01号、北原公一=サピアタワークリニック副院長]

戻る