【寝返りで起こるめまい】

Mさん(48歳)は最近、寝返りを打つと起こるめまいに 悩んでいる。重い病気かもしれないと思うと、不安でたまらない。

近年、めまいを訴える人が増えているようだ。めまいとは、自分 または周囲の物が動いていないにもかかわらず、動いているかのように感じ る異常な感覚のことである。
めまいは主にその症状から、自分や周囲の物がグルグルと回って見える 「回転性めまい」、体がフワフワと浮き上がるような不安定な感覚が生じる 「浮動性めまい」、頭や体がグラグラと揺れているように感じる「動揺性めま い」の3つに分けることができる。
このうち、回転性めまいは、耳の一番奥にあって聴覚と平衡感覚を司る内 耳の異常が原因であることが多いと考えられている。一方の浮動性めまいと 動揺性めまいは、脳の障害によって起こることが多いとされている。だが、 単純には分類できないケースもあり、正確な診断をするためには、いくつか の検査が必要である。
座っていて急に立ち上がった時に、視界がふっと暗くなる一時的なめま い、いわゆる“立ちくらみ”は、経験したことのある人が多いだろう。しかし、 めまいが繰り返し起こると、「何か脳の病気ではないか」「もしかしたら命 にかかわる重い病気かもしれない」などと、不安に思いがちだ。
確かに、めまいは様々な原因で起こることが知られている。脳梗塞など、 脳や心臓の重い病気の警告症状として生じる場合もあるため、そのうちよく なるだろうと軽視すべきではない。
ただし、逆説的な言い方になるが、心配しすぎるのもあまりよくない。M さんのように、寝返りを打つなど、特定の方向を向いた時にめまいが繰り返 し起こる場合は、回転性めまいの中でも、「良性発作性頭位めまい症」ではな いかと考えられる。
これは、頭を特定の位置に動かすと、突然、数分以内の激しいめまいが生じ る病気で、頭をその位置に動かすたびに、短時間のめまいを繰り返す。安静 にしていればめまいは起こらず、耳鳴りや難聴など、ほかの症状は見られな い。すぐに命にかかわるような危険なめまいではなく、めまいの症状を訴え てくる患者さんに多く見られる病気である。
この病気でめまいが生じる詳しい原因は分かっていないが、内耳にある耳 石器という器官の耳石がはがれて三半規管の中に入り込んでしまい、神経を 刺激するために起こるのではないかと考えられている。
繰り返しめまいが起こることから、「また、あのつらいめまいが起こるか もしれない」と不安になる患者さんも多い。こうした不安がストレスとなり、 逆にめまいを誘発する可能性もある。我々は、こうした患者さんにはめまい の治療薬に加えて、抗不安剤などを処方し、症状を見ながら適宜調節するよ うにしている。まずは一度、医療機関で受診して、検査をしてみるといいだ ろう。
(談話まとめ:小文理恵子=日経メディカル別冊)

[出典:日経ビジネス、2007/06/24号、坂田英明=埼玉県立小児医療センター 耳鼻咽喉科副部長]

戻る