【服薬と肝機能障害】

ストレス性胃腸障害がようやく回復に向かったAさん(35歳)。 薬を長く服用していると、肝臓に影響が出ることがある と聞き、気になっている。

Aさんが心配しているように、薬が原因でかえって肝臓を悪 くすることがある。特に、何種類もの薬を飲んでいる場合、薬をやめただけ で良くなることもある。
薬剤による肝機能障害については、いろいろな意見があるが、基本的には どの薬でも、肝機能障害を起こす可能性がある。これは、最近多用されてい るサプリメントなどの栄養補助食品に対しても言えることだ。
肝臓は体の中の“化学工場”と言われるほど機能が多い。糖質、脂質、た んばく質の代謝をはじめ、ビタミンや血液の貯蔵、胆汁や尿素の合成のほか、 アルコールなど体にとっての毒物を分解する役割も担っている。肝臓にとっ ては、薬やサプリメントなども、一種の毒物と見なされる。
薬剤性の肝機能障害の1つには、中毒性の肝障害が挙げられる。薬を一定 量以上使用すると、誰にでも起こり得る。薬の服用後、4〜8週間頃までに 徐々に悪くなり、肝障害が見つかる。肝臓に悪影響を及ぼす頻度の高い薬と して報告が多いのは、抗生物質、消化薬、抗ガン剤、抗ウイルス剤、消炎鎮 痛剤などだ。これらは全般に使用頻度が高いという要因もある。
2つ目は、アレルギー性で体質的なものである。この場合は急速に肝機能 障害を起こし、症状がすぐに出るので分かりやすい。倦怠感、食欲の減退、 嘔吐やむかつきなどに加え、発熱や発疹などの全身症状を伴うことも多い。 時に重篤な経過を辿るので要注意だ。
ただし、肝機能障害が薬剤によるものと考える前に、もともと何らかの肝 機能障害がなかったかを鑑別診断する必要がある。薬剤性以外の肝機能障害 としては、ウイルス性肝障害(B型・C型肝炎)、アルコール性肝障害、自己 免疫性肝障害がある。
肝機能障害は、血液検査でおおむねの判断がつく。AST(GOT)は肝臓や 筋肉などに含まれる酵素で、ALT(GPT)とともに細胞が壊れた時に上 昇する。同じく肝臓に含まれる酵素でアルコールによる肝障害の指標となる γ−GPTなどの数値を見る。検査の際にはまず医師に、どんな薬をいつから 服用しているか、最近まで使っていた薬なども正確に伝えてほしい。
薬剤性の肝障害が疑われたら、使用している薬は直ちにやめる。肝臓は再 生力が高く、早期発見で原因を取り除けばゆっくりと回復する。しかし一方 で、“沈黙の臓器”とも言われ、無症状で病気が進行してしまう怖さがある。 検査数値に問題を指摘されたら、放置せずに、専門医にかかることが肝要だ。
薬に限らず、漢方薬やサプリメントなどの栄養補助食品でも、必要以上に 長期服用はしないこと。だからといって、過剰反応するのも避けたい。不安 があれば医師に相談し、用法や用量をよく守って、薬とうまくつき合っても らいたい。
(談話まとめ:杉元順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2007/09/17号、鈴木通博=川崎市立多摩病院副院長]

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