【なかなか止まらない鼻血】

ゴルフのラウンド中、突然鼻血が出て止まらなくなり、 プレーを中断したFさん(58歳)。何か悪い病気ではないかと、 不安になっている。

いわゆる鼻血と呼ばれる鼻出血の8〜9割りは、キーセルバッハと いう部位からの出血である。 キーセルバッハとは、鼻の入り口から小指の先が入ったあたり、 鼻の真ん中の壁側のコリコリした部位で、ここには毛 細血管が多く集まっている。
子供の鼻血の場合は、鼻いじりなどでこれらの血管が傷つけられ出血に 至ることがほとんどだ。鼻の粘膜が薄いので、少しの刺激でも出血してしま うわけだが、大人になるにつれ粘膜は厚くなり、鼻血を出すことは徐々にな くなっていく。
しかし、大人になってからの鼻血の場合、子供の鼻血とは異なる様相を呈 する。同じキーセルバッハ部位からの出血であっても、子供のように広範囲 に毛細血管が傷つけられてじわじわと出血するのとは違い、太い血管の一ヶ所所が傷つき、そこから出血している可能性があり、出血量も多くなりがちだ。
特に中高年以降の鼻血の場合は、血管そのものが脆くなっていることも、 1つの要因となっている。鼻粘膜の表面を走る血管が少しの衝撃で破れ、出 血に至るのだ。一度出血すると、同じ個所が破れやすくなり、何度か出血を 繰り返す人も多い。
キーセルバッハ部位での出血ならば、小鼻を圧迫する止血法で自然に止 まるのが普通だが、鼻の奥の方の血管が破れると、自分で圧迫できないため、 血はなかなか止まらない。病院での処置が必要となる場合が多くなる。
鼻血が止まらず来院する患者さんには、心臓や脳血管障害などの病気で、 血液の凝固を抑制する薬を服用しており、その薬の影響で血が止まりにくく なっている人が多い。
丸めた脱脂綿やガーゼを出血している方の鼻の穴に詰め、小鼻を指で圧迫 してみても、15分以上血が止まらないという場合は、すぐに耳鼻咽喉科を 訪れるのが望ましい。止血の際は、前かがみの姿勢となり口にたまった血を 吐き出すこと。上を向くとのどに血が流れ、気分が悪くなることもあるので 要注意だ。
耳鼻咽喉科外来では、まず鼻鏡や内視鏡で出血個所を確認し、基本的には ガーゼなどによる圧迫法で止血する。出血個所が鼻の奥の場合は、止血のた めに当てたガーゼを取り外すために3〜4日後に再来院が必要だ。
出血個所が明確で、出血を繰り返す場合は、電気やレーザーでその個所を 焼き、出血しにくくする治療を行う。日帰りでできる簡単な処置なので、繰 り返す鼻血に困っている人は、一度耳鼻咽喉科で相談するとよいだろう。
また、症例は少ないが、まれに白血病など血液の病気や、上顎ガンなど鼻 腔内の腫瘍により鼻血が出ることもある。両方の鼻の穴からじわじわと出血 が続く、歯茎からも血が出る、血の混じった鼻汁が出るなどの症状が見られ る場合は、早急に受診すべきであろう。
(談話まとめ:仲尾匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2007/09/10号、八木昌人=武蔵野赤十字病院耳鼻咽喉科部長]

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