【薬の効かない高血圧に潜む病気】

最近、太り気味のAさん(50歳)。熟睡もあまりできていないようだ。 健康診断で高血圧を指摘されたが、薬を飲んでも血圧が下がらない。 どうすればよいのか。

Aさんのように、太り気味の人が熟睡できず、薬を飲んでも 高血圧の改善が見られないとしたら、SAS(睡眠時無呼吸症候群)の可能性 が考えられる。
この疾患の主な症状としては、@就寝時にいびきと無呼吸を繰り返す。大 きないびきで呼吸が回復するとともに睡眠が浅くなる。A寝つきはよいが熟 睡感がない。B睡眠中に息苦しくなって目覚めることがある。C夜中にトイ レによく起きる。D起床時に眠気、だるさ、頭痛がある、などが挙げられる。 結果として、仕事への集中力が低下し、意欲が持続しない、イライラしやすい といったことにつながっていく。
40代から60代で、BMI「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」が25〜30程 度の軽度肥満症の人に多いことも、この疾患の特徴だ。それゆえに、働き盛 りのビジネスマンこそ注意すべき疾患とも言える。
SASの問題点は、昼間に眠くなって仕事に影響することだけではない。近 年、SASはそれ自体が高血圧、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や脳卒中のリスク 要因となることが分かってきた。
無呼吸の時間が長くなると、動脈の血液に含まれる酸素濃度が低下して、 心臓は懸命に血液を送り出そうとするが、血管は収縮する。その結果、血圧 が高くなったり、脈拍が速くなったりして、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高 まるというわけだ。そのほか、SASに催患していると、糖尿病や勃起不全も 合併しやすい。
調査によって4〜9割と幅はあるものの、脳卒中を発症した患者の多くに SASの症状が見られると言われる。また、高血圧の原因の1つにSASが考え られるようになり、薬を飲んでも効かない高血圧患者の83%、高血圧患者 全体で見ても37.3%にSASが認められるという報告がある。
血圧を下げるための薬を2種類以上併用していても血圧が下がらない場合 や、起床時の血圧が就寝時と比較して収縮期で15以上、拡張期で10以上高 い場合には、SASを疑うべきだ。
SASの診断は、専用の機械を使って、実際の睡眠中の呼吸状態を見る必要が ある。そのため、SASを疑った際には、睡眠外来を持つ医療機関で診察を受け てほしい。
SASの治療は通常、睡眠時に鼻マスクから空気を送り込む「CPAP(経鼻 的持続陽圧呼吸療法)」が行われる。CPAPによって、熟睡が可能になるの はもちろんのこと、早朝高血圧のSAS患者の場合、その上昇幅が一晩で改善 するケースも多い。
肥満についても、SASの治療によって改善する例が多い。当センターに通 院した患者でも、3カ月以内に10kg痩せたケースがある。ただし、SASの 治療では、定期的な運動とバランスのよい食事も重要である。質のよい睡眠 を取って、健康な生活を心がけたい。
(談話まとめ:山崎大作=日経メディカル)

[出典:日経ビジネス、2007/08/27号、成井浩司=虎の門病院睡眠センター長]

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