【離着陸時の耳トラブル解消法】

海外出張が多いNさん(48歳)。 離着陸時の耳が詰まるような感じが不快でたまらない。 特に風邪を引いた時は、その症状が ひどくなるような気がしている。

飛行機の離着陸時に耳が詰まるよ うな感覚は、誰でも一度は経験しているだろう。音が聞きづらくなっ たり、耳が痛むことも珍しくない。
このような症状は、機内の気圧変化によるものである。飛行機の高度が上 昇すると機内の気圧は低下し、降下すると気圧は上昇する。離着陸時の気圧 の変化が原因で起こる耳痛や難聴などは、航空性中耳炎と呼ばれている。
航空性中耳炎が起こるメカニズムには、耳の構造が関係している。耳の奥 は、耳管と呼ばれる細い管で鼻の奥とつながっている。その途中に鼓膜があ り、耳の外側と内側(耳管内)とを隔てている。この耳の外側の気圧(外圧) と鼓膜の内側の気圧(内圧)に差が生じると、空気を通さない鼓膜は気圧の低 い方に押し込まれ、痛みや難聴などの症状が表れる。
例えば、離陸後、機体の高度が上昇すると、機内の気圧(外圧)は下がる。 だが、内圧は地上と同じままなので、気圧の低い外側に鼓膜は押される。ち ょうど、高い山に登ると、スナック菓子の袋がパンパンになる様子と同じ現 象が耳の中で起こっているのだ。
離着陸時に外圧と内圧の差が生じると、鼻の奥の耳管の先を開いて換気を 行い、気圧差を解消しようとする。内圧の調整が追いつかないと、航空性中 耳炎が起こるきっかけとなる。
航空性中耳炎は、離陸時より着陸時の方が起こりやすいと言われている。 それは、内圧が高い場合に耳管が開きやすく、逆の場合には鼻から空気が入 りづらい構造になっているからだ。
対処法としては、ガムなどを噛んであごを動かしたり、離着陸時に唾液や お茶を飲み込むのがよいとされている。耳が詰まる兆候を感じ取ると、反 射的に唾液をぐっと飲み込む人は少なくないだろう。こうすると、耳管の先 が開いて換気を行うことで、気圧の差を解消しやすくなる。
誰でも多かれ少なかれ、内外での気圧の差は生じるが、特に耳管の先の鼻 にトラブルがあると航空性中耳炎を起こしやすい。風邪やアレルギー性鼻炎 などで、鼻が詰まっていたり、鼻水が出ている状態では、耳管の先が開きに くくなるためだ。また、鼻や喉に炎症を起こす微生物がいると、それらも一 緒に吸い込んでしまう可能性もある。搭乗前に鼻の調子が良くない場合、あ らかじめ治療しておくといい。
鼻詰まりが強い時は、離着陸の前に一般医薬品の点鼻薬を使用すること で、航空性中耳炎の予防になる場合がある。薬局・薬店で購入する際は、薬 剤師に相談してほしい。
航空性中耳炎の症状のほとんどが一過性のもので、その日のうちに治まっ てしまう。だが、まれに難聴や耳鳴りの原因となる内耳損傷を起こす場合も ある。症状が長引く場合は、専門医で診てもらうといいだろう。
(談話まとめ:中西奈美=日経ドラックインフォメーション)

[出典:日経ビジネス、2007/08/06-13号、波田野洋一=はたの耳鼻咽喉科院長]

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