【足にも現れる動脈硬化のサイン】

暑い日が続くのに、足の冷えを感じているSさん(57歳)。 最近は、少し歩くとふくらはぎの痛みも出る。 放づておいてよいものか心配だ。
近年、生活習慣の欧米化などを背景に、心筋梗塞や脳梗塞といっ た動脈硬化性疾患が増えている。肥満や高血圧、糖尿病などが動脈硬化を進 展させる危険因子として知られているが、実はこれらの影響は、心臓や脳だ けでなく、足にも現れる。
足の血管が狭窄し、しびれや冷たさを感じたり、歩くと痛みが生じたりす るのは、その典型的な症状だ。狭くなる血管の場所や程度によって症状は変 化していくが、重症になると安静にしていても足の痛みが現れたり、皮膚の 変色や潰瘍が起こってしまう。血流の障害で、水虫やタコなどが治りにくく なることもある。
こうした病態は、「閉塞性動脈硬化症」と呼ばれる。高齢化や生活習慣病 の増加に伴い患者数は急増しており、国内の推定患者数は300万〜400万人 と言われている。高齢になるほど発症率は高まり、50歳以上の中高年男性 が多数を占める。
しかし、足への関心は心臓や脳に比べて一般的に低いうえ、足の冷えや歩 行時の痛みは年のせいだとあきらめて医者にかからない人も多いため、見逃 されているケースが非常に多い。だが、放っておいて血流が完全に途絶える と、足が腐って切断せざるを得ない場合もある。早期に発見し、治療するこ とが大切だ。
閉塞性動脈硬化症は、足をよく観察することで、自分でもある程度は察知 できる。足の血管が狭くなって血流が悪くなると、足背(足の甲)の脈が弱く なったり足が冷たく感じたりするので、左右で比べてみるとよい。
医療機関では、腕と足に血圧計を巻き、血圧の比を測ることで大まかな診 断がつく。足の血圧が腕に比べて低ければ、足の動脈が狭くなっている可能 性が高い。確定診断のためにはさらに詳しく検査することになるが、最近は 体への負担がほとんどない診断法が広がりつつある。もし、症状に思い当た れば一度、医師に相談してほしい。
治療は症状の進行具合から選択するが、軽症ならば、足に痛みが出るまで 繰り返し歩行する運動療法だけでも症状は改善する。歩くと、狭くなった血 管の周りの血管が発達して、血流を補うようになるのだ。加えて、血液をサ ラサラにして固まりにくくする抗血小板薬などを内服することも多い。
足に変色や潰瘍が起こるような垂症例の場合は、バルーン(風船)やステン ト(金属製の筒)を使って血管を広げる治療や手術を行うことになる。
なお、閉塞性動脈硬化症は全身の動脈硬化が進んでいることを表す1つの 病態にすぎず、その部分だけ治療すれば終わりというわけにはいかない。狭 心症や脳血管障害など、ほかの動脈硬化性の疾患を併せ持っていることも多 い。それら全身の動脈硬化のチェックや治療、さらに喫煙などを含めた生活 習慣の改善も必要だ。
  (談話まとめ:末田聡美=日経メディカル)

[出典:日経ビジネス、2007/07/23号、桧尾汎=松尾循環器科クリニック院長]

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