【飲み込めるカプセル内視鏡】

Tさん(40歳)は同僚から、「最近、“カプセル内視鏡”が 認可されたらしい」と聞いた。 人間ドックで受けた“胃カメラ”とはどう違うのだろう、と気になっている。

カプセル内視鏡とは、小型ビデオカメラを内蔵したカプセル状の 内視鏡だ。カプセルのサイズは、長さ26mm、直径11mmと、通常のビタミン剤より やや大きい程度である。
従来の内視鏡検査が、口や鼻、肛門から管を挿入し、管の先端部にある内 視鏡で診るのに対し、カプセル内視鏡なら、カプセルを飲み込むだけで消化 管の中を画像診断できる。このため、従来の内視鏡検査につきものだった、 のどに管を通す時の苦しさや、腹部に空気を入れて膨らませることによる膨 満感など、“検査の辛さ”が軽減されるのが特徴だ。
ただし、カプセル内視鏡の対象となるのは小腸の病変だ。「胃カメラ」と呼 ばれる上部消化管内視鏡検査が幸いからといって、その代わりに実施できる 検査方法ではない。
今のところこの検査は、下血や貧血といった消化管が原因と見られる症状 がありながら、上部消化管内視鏡検査と下部消化管内視鏡検査(大腸ファイ バースコープ検査)でも病変が見つからなかった人が対象となる。
実は、小腸は人体の中で最長の臓器であるにもかかわらず、20世紀まで は効果的な検査方法がほとんどなかった。その後、ダブルバルーン内視鏡と いう小腸検査法が開発され、効果的に検査ができるようになった。とはいえ、 長く曲がりくねった小腸に管を通すため、すべてを検査するには数時間かか り、患者の負担も大きかった。

一方、カプセル内視鏡の場合、心電図検査の時のようなセンサーを体に張 りつけた後、カプセルを飲むだけで検査ができる。検査には約8時間かかる が、カプセルを飲んでから一定の時間が過ぎれば、患者は病院にいる必要は なく、仕事や家事、食事なども普段通りにできる。苦痛がないばかりでなく、 体を拘束されないという利点がある。飲んだカプセル内視鏡は自然に排泄さ れ、回収の必要はない。
体内に入ったカプセル内視鏡は腸管内を蠕動(ぜんどう)運動によって進み、1秒間に 2枚程度、全部で約6万〜7万枚の画像を撮影する。この画像は、撮影と同 時に患者の体につけたセンサーに送られ、レコーダーに記録されたそのデー 夕を医師が解析する。
当院では、2004年からカプセル内視鏡による検査を行っているが、上部 消化管にも大腸にも出血の原因が見当たらないケースの約9割で、小腸に何 らかの病変が見つかっている。この検査では、特に小腸ガンを早期発見でき るメリットが大きい。小腸ガンの場合、従来はガンが進行し、腸閉塞などが起 きてから発見されるケースが多かったからだ。
これまでカプセル内視鏡検査は、ごく限られた施設で自主研究として行わ れてきたが、今年6月から販売が開始されたため、導入する医療機関も増え るだろう。
(談話まとめ:武田京子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2007/06/25号、桧橋信行=NTT東日本関東病院内視鏡部、消化器内科部部長]

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