【高枕安眠法】

「枕を高くする」は、「安心して眠る」という意味で使われている。これは、 中国の前漠時代(紀元前202〜紀元後8年)の歴史家、司馬遷が著した『史記』 の「楚韓の患(うれい)無ければ則(すなわ)ち大王、枕を高うして臥す」と いう記述からきた言葉だ。秦のために「連衡策」を説いて回った張儀は、 魏王に「魏が秦に仕えれば、楚と韓は決して攻撃してこないでしょう。 それで大王も枕を高くして安心して眠れます」と説得した。
この史実は、心配なことがなくなれば枕を高くして眠れる、と教えている のだが、医学的には「枕を高くして眠れば、心配なことがあってもよく眠れ る」と解釈できる。上半身を高くして脳にたまった血液が体に戻りやすくし た方が、交感神経(自律神経の一種)の緊張が抑制され、脳の興奮が鎮まっ てよく眠れるからだ。
実際、眠れないので高枕で寝ていた王もいる。ドイツ・バイエルンのルー トヴィヒ2世(1845〜86)である。神経衰弱で有名なこの王様が、上半身が 高くなるベッドを愛用していたという。これは、現在で言うリクライニン グベッドに相当する。
実は高枕と言っても、頭部のみ高くするのは、首を痛めるのでよくない。 リクライニングベッドのように背中の肩甲骨のあたりから首、頭部へとだい たい30度ぐらいの角度で徐々に高くする。大型の羽毛枕が5〜6個用意で きたら、それを積んで上半身を高くするとちょうどいい。あるいは、普通の 枕や座布団、毛布などを利用して作るのも簡単だ。心配事があって寝つけな い時、高枕を試してみてはいかがか。

[出典:日経ビジネス、2007/06/18号、堀田宗路=医学ジャーナリスト]

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