【心筋梗塞の発作に備える】

Kさん(56歳)は健康診断で、心筋梗塞の疑いがあると言われた。
もしも突然、発作が起きたら・・・と不安に感じている。

急性心筋梗塞は、心筋(心臓の筋肉=横紋筋)へ酸素と栄養を運 んでいる冠状動脈に血栓が詰まり、血液が行き渡らなくなることで、心筋の 細胞が壊死してしまう病気である。日本にはおよそ15万人もの患者がおり、 毎年5万人弱の人が死亡すると言われている。
その病状は約30分以上にわたって、前胸部に強い痛みや締めつけ感、圧迫 感が続く。痛みのために冷や汗や吐き気、嘔吐、呼吸困難などに陥るため、 恐怖感や不安感を伴うことも多い。
心筋梗塞を引き起こす原因となるのは、話題のメタポリックシンドローム (代謝症候群)にも代表される高血圧症、糖尿病、高脂血症、肥満に加えて、 喫煙、過労、ストレス、睡眠不足や遺伝的素因などが挙げられる。もちろん 直ちに生活習慣を改め、治療できるものは治療し、原因を取り除くことが先 決であるのは言うまでもない。

急性心筋梗塞になった場合、発作後2時間以内に閉塞した冠動脈を再び開 通させる「再港流療法」といった適切な処置をすれば、その死亡率はわずか 6〜7%にとどまる。そのため、迅速な治療が求められている。
また、日頃からかかりつけの医者を訪ね、健康状態を知ってもらっておく ことも大切だ。平常の心電図の記録があれば、発作時に役立つ。
こうした背景から、治療の現場でIT(情報技術)の活用が始まっている。 当クリニックで展開しているのは、手のひらに収まるほどの小さな装置を使ったシステムだ。
このシステムを携帯し、夜間や外出先、運動中でも、胸などに不調を感じたら、 その場で約30秒間握る。するとすぐに心電図が取られ、そのデータが内蔵 されたPHSを通じて、リアルタイムで慶応義塾大学病院の受診・診断部門 (心機能室)に送信される。送信にかかる時間は、わずか30秒ほどだ。
24時間態勢で待機する心臓専門医がデータを診断し、すぐに病院に行く べきか、後日の受診でも大丈夫なのかなどを判断し、当クリニックを経由し て、本人にフィードバックする。伝送から専門医の診断までは原則10分以 内であるため、緊急対応が必要な場合に力を発揮している。こうしたシステ ムの利用も、今後は視野に入ってくるだろう。
当クリニックでこのシステムを運用し始めて約1年。緊急時でも症状や容 態によって、迅速かつ的確な対応が可能となり、既に命を救われた人もいる。 患者さんは急な発作への備えができ、いたずらに不安感を持たずに済むよう になっている。
現在は関東周辺の当クリニックとそのグループの会員向けのサービスだ が、今後は徐々に全国へ普及させていく見込みだ。遠くの親類より手のひら に収まる小さな装置が、頼りになる時代なのかもしれない。
  (談話まとめ:江木 園貴=プレゼランス)

[出典:日経ビジネス、2007/06/11号、水町垂範=水町クリニック院長]

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