【花柳病からSTDへ】

昔、性感染症のことを花柳病と言った。1903(明治36)年に日本花柳病予防 協会(現・性の健康医学財団)が設立された当時、花柳病は梅毒、淋疾、軟性 下疳(げかん)、鼠径(そけい)リンパ肉芽腫を指した。花柳病はやがて性病、 性行為感染症、性感染症と名称を変え、今やSTD(sexuallytransmitted diseases) などと呼ばれるのが一般的になっている。
現在、「性感染症診断・治療ガイドライン2006」が指定するSTDは、梅毒、 淋菌感染症、性器クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、性 器伝染性軟属腫、腱トリコモナス症、細菌性腹症、ケジラミ症、性器カンジ ダ症、非クラミジア性非淋菌性尿道炎、軟性下府、HIV感染症/エイズ、A型 肝炎、B型肝炎、C型肝炎、赤痢アメーバ症である。
かっで性病は男女間のセックスで感染するのが大半だったが、昨今では口 と性器や肛門、同性間の性的接触など多様な性行為によって感染している。
一時、あれだけ騒がれたエイズがほとんど話題にならなくなった。しかし、 厚生労働省のエイズ動向委員会によれば、日本国籍を持つエイズ患者の累積 数は約3100人、HIV感染者は6000人を超え、依然として増加傾向にあると いう。さらに一般には、この数十倍もの潜在感染者がいるとも言われる。
今やSTDは、ありふれた感染症になった。売春は人類最古の職業と言われ るが、援助交際という名の売春がその蔓延に大きな役割を果たしているのは 間違いない。そして、市井の多くの人々には無縁に思われていたSTDは、家 庭の中にも侵入してきている。

[出典:日経ビジネス、2007/06/04号、田野井正雄=医学ジャーナリスト]

戻る