【病気かもしれない極度の汗】

外資系企業に勤めるTさん(35歳)。手のひらの汗がひどく、 握手での挨拶が嫌でたまらない。書類の文字がにじんでしまったり、 仕事にも支障を来している。

全身あるいは局所に汗が多量に出る「多汗症」は、病気で、発汗異常の1つである。
全身性の多汗症は、気温の高い時や発熱時に起こる。これは、甲状腺機能 克進症や糖尿病などの病気がそのもととなる。また、妊婦や肥満の人にも起 こる場合がある。
局所性の多汗症では、通常、手のひらや足の裏、わきの下など、体の一部 にびっしょりと汗をかく。この場合、全身性の病気とは関係ないが、発汗調 節機能や自律神経の異常が原因であることが多い。
治療法としては、内服薬、外用薬、神経ブロック、皮内注射、手術などが 挙げられる。それぞれにメリットとデメリットがあるが、まず最初は内服薬 治療を試みる。
内服薬治療では、自律神経失調症改善薬と、多汗症の適応になっている 胃・十二指腸潰瘍の薬を組み合わせて処方する。手にも足にも有効だが、服 用を継続しないと効果が持続せず、効果の出る人と出ない人がいる。
外用薬治療は、塩化アルミニウム液を毎晩、手のひらなどの患部に塗る方 法だ。だが、単独では治療効果がやや低いので、内服薬と併用することが多 い。2週間様子を見ても効き目が十分でない場合は、ほかの治療法を試みる。 神経ブロックは、麻酔科の医師に首に薬剤を打ってもらう方法である。
皮内注射法は、手のひらの十数カ所に、ボツリヌス毒素を注射するものだ。 治療効果が高いが、保険は適用されない。効果が持続するのは3カ月前後な ので、繰り返し注射をする必要がある。また稀に、手のひらの筋力が低下する 恐れがある。

 手術ではどこの汗を減らすかによって、手術する部位を決める。手のひら の場合は、肋骨の上から2番目と3番目の骨の内側にある、手に関わる交感 神経を内視鏡下で2カ所焼灼する(胸腔鏡下胸部交感神経節焼灼術)。軽く 済ませる場合は、2番目の交感神経だけを焼灼する。わきの下の汗も止める 場合は、4番目を焼くことがある。
手術は全身麻酔で行い、時間は約30分ほど。傷は小さくて済むが、通常は 2〜3日の入院が必要だ。手術の場合は保険が適用される。手のひらの発汗 を抑える効果はほぼ確実で、足にも及ぶことがある。また、1回の治療で効 果が持続するのもメリットだ。一方、治療した部位とは別の胴体などに、不 快を感じるほどの多汗が生じる副作用が起きるケースが1〜2%ほどある。
そこで重要になるのは、最初のインフォームドコンセント(十分な説明と同 意)だ。特に、最終手段である手術を考慮する場合は、本人がどれくらい汗を 不快に思っているのか、困っているのかで決める。中には精神的なものだと 考え、精神・神経科を訪れる人も少なくないが、まずは皮膚科で診察を受け てほしい。
(談話まとめ:杉元順子=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2007/06/04号、河野匡=虎の門病院呼吸器センター 外科部長]

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