【痔対策は生活習慣の改善から】

トイレのたびに、お尻からの出血を気にしているGさん(49歳)。 痛みはそれほど強くないし、診察を受けるのも恥ずかしいので、 薬局で買った薬を使い続けている。

肛門部の疾患の総称を「痔」と呼ぶ。わが国では、成人の約3分 の1が罹患していると言われている。
痔は、肛門のどの部位にどのような症状があるかで区別され、痔核(いぼ 痔)、痔凄、裂肛(切れ痔)がその3大疾患である。患者さんの割合は、それ ぞれ50%、25%、15%となっており、複数の疾患を合併しているケースも少 なくない。また、近年ではこれらの疾患で大腸肛門科を受診する患者さんが 増えている。
主な自覚症状は「出血」「痛み」「腫れ」の3つ。私の診療所では、患者さんの 約75%が、出血を訴えてやってくる。手や足とは異なり、肛門は簡単に見る ことができない部位であるため、痔に気づくには自覚症状が重要である。
例えば、いぼ痔は「痛みは少ないが、出血しやすい。肛門から何か飛び出て いる感じがある」。また、切れ痔は「(患部が)とリヒリと痛むが、出血は少な い」。痔壕は「痛みや出血はほとんどないが、膿が出る」といった具合だ。
このように、いぼ痔は出血、切れ痔は痛みという特徴があるが、疾患に対 して抱いているイメージと異なるのではないだろうか。そのほかの重要な手 がかりとして、切れ痔の患者さんには便秘気味な人が多いことも挙げておこ う。便を無理に出そうとすると、硬くなった便が肛門部を傷つけてしまうか らだ。
痔であることが発覚すると、「すぐに手術になるのではないか」という不 安から、医療機関に行くのをためらう人も多いだろう。だが、肛門科の医師 ならば、病気が進行した重度の患者さん以外に手術を施すことはほとんどな い。まずは生活習慣を改めるところから始まり、薬による治療を経て、それ でも改善しない場合に手術を視野に入れる。
特に生活習慣の改善として、@血行促進のために入浴をする、A立ったま ま・座りっぱなしの状態を避ける、B便秘や下痢を治し、排便習慣を見直す、 C腸に刺激となるアルコールや辛い食べ物などを取りすぎない、などは効果 が高い。
また、人に見られる恥ずかしさも受診を妨げる要因だろう。その結果、G さんのように薬局で売られている一般用医薬品で済まそうとする患者さんも いるかもしれない。だが、誤った薬を使い続けるとかえって症状を悪化させ てしまう。薬局では、薬剤師に相談して症状に合った一般用医薬品を買うよ うにしたい。
また、早期に受診し、治療を始めれば、それだけ早く治すこともできる。 もちろん、肛門の痛みや出血の原因は、前述の疾患がすべてではない。ガンや ポリープなど重大な疾患の場合もあるので、自己判断は禁物だ。受診する際 は、肛門の疾患に精通した、肛門科の専門医が望ましい。
(談話まとめ:中西 奈美=日経ドラッグインフォメーション)

[出典:日経ビジネス、2007/05/28号、黒川彰夫=黒川梅田診療所院長]

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