【視野の中心部が見えにくい】

右目だけで物を見ようとすると、視野の中心部がゆがんで、 見えづらいことに気づいたNさん(58歳)。検査を受けると、 加齢黄斑変性と診断された。
人間の目をカメラに例えた場合、見える景色が写り込むフイルム の役目を果たすのが網膜である。その中心部にある黄斑(おうはん)が加齢によって変性 し、視力に障害が起きる病気を加齢黄斑変性と言う。
視野の中心部分がゆがんだり、暗く欠損したりして、正常には見えなくな る。Nさんのように、片目だけに症状が出た場合、両目を使っている限り、 なかなか症状に気づかないことが多い。気づいて受診する頃には、病状が かなり進んでいるケースが目立つ。
欧米では、高齢者の失明原因のトップである加齢黄斑変性だが、近年、日 本でもその患者数が増えてきた。白人に加齢黄斑変性が多いのは、白人の目 が光の刺激に弱いことが主な理由と言われているが、日本で患者数が増えた 原因には、高齢化に加え、食生活の欧米化の影響もあるのではと言われる。
60歳以上に多く発症し、男性の方が女性の約3倍と患者数が多い。また、 喫煙も危険因子の1つであり、1日20本以上吸う人の発症率は吸わない人の 約3倍という調査結果もある。
加齢黄斑変性の診断には、造影剤を使った眼底撮影や、OCTと呼ばれる 網膜の断面図撮影など、いくつかの検査が必要となり、検査には半日から1 日を要する。
加齢黄斑変性には、滲出型と萎縮型がある。滲出型では黄斑部に正常な血 管とは異なる新生血管が発生し、様々な病状を起こす。視力低下が進み、失 明に至ることも珍しくない。萎縮型は、黄斑部の組織が老化によって萎縮 し変性するために病状が表れる。だが、進行が極めて緩やかなため、特に 治療は行わず、定期的に新生血管ができていないか検診のみを行う。
滲出型の場合は、かつては決定的な治療法がなく、視力低下はまぬがれな かった。最近はPDTと呼ばれる光線力学療法が有効であることが分かって きた。PDTでは、ある薬剤を静脈に注射し、新生血管内にとどまったこの 薬剤に特定の波長の光線を照射する。すると薬剤が活性化し、新生血管が破 壊される。今まで治療として行われていたレーザー光凝固に比べ、周りの組 織を破壊することなく新生血管だけを破壊でき、効果的に視力低下の進行を 遅らせることができる。
PDTによる治療は、施術後、自然光を避けなければならないため、3〜 4日の入院が必要となる。現在、PDTを行えるのは資格を持つ認定医に限ら れている。認定医のいる病院は、眼科PDT研究会のホームページ(http:// www.pdti.jp/)で検索できる。
加齢黄斑変性は、老化現象の一種であるが、網膜に栄養を与える働きのあ るオキュバイトというサプリメントに、視力低下の進行を遅らせたり、予防効 果があるという報告もある。薬局で市販されているので、日頃から予防のた めに摂取するのもよいだろう。
(談話まとめ:仲尾匡代=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2007/04/30号、大野尚登=お茶の水・井上眼科クリニック 医学博士]

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