【血圧管理で脳梗塞を予防】

脳ドックで「気がつかないうちに脳梗塞を起こしていましたね」と 指摘されたAさん(50歳)。今後は血圧の管理を徹底するよう 注意されたが、なぜだろう。
日本人の死因の3位を占める脳卒中。その中でも、脳の動脈が 閉塞したり狭窄してしまう脳梗塞は、日本人の高齢化が進むにつれて、さら に増えると予測されている。また、脳梗塞は麻痔や意識障害などを引き起こ す以外にも、認知症(脳血管性認知症)の原因となることも知られている。
2005年、静脈内投与製剤のアルテプラーゼ(t-PA)が日本でも承認され、 脳梗塞治療が大きく変わったと言われる。この薬については、一般誌で取り 上げられることも多く、脳梗塞を発症しても、後遺症なく社会復帰できるよ うになったと考えている人も多いのではないだろうか。
だが、t-PA自体も脳梗塞の発症から3時間以内に投与する必要があるな ど、万能薬ではなく、その効果にしても、ほぼ障害なく退院できる患者の割 合を2割から3割強に引き上げた程度にとどまる。脳梗塞は依然として、予 防が重要な疾患なのだ。
しかも脳梗塞は一度発症すると、それ自体がリスクとなり、再発時は症状 が悪化する。明らかな再発以外にも知らないうちに無症候性脳梗塞(いわ ゆる隠れ脳梗塞)が増加し、認知機能や歩行機能が低下することもある。
脳梗塞をはじめとした脳血管障害を予防するためには、コレステロールや 血糖値、血圧の管理、喫煙や過度の飲酒を控えるなどが必要だ。だが、その 中でも最も重要と考えられているのが、血圧の管理である。
脳梗塞を予防するために目指すべき血圧の値として、日本高血圧学会のガ イドラインでは140/90mmHg未満と推奨されている。だが、ここで示され た値は医療機関で測定する際の基準であり、脳梗塞のリスクを正しく評価で きていないことが分かってきた。
なぜなら、健康な人は、就寝時に血圧が下がる。だが、症状がない無症候 性の脳梗塞も含めて、脳梗塞を発症した経験を持つ人は、就寝時に血圧が下 がらない場合が多く、上がることもある。そのため、医療機関で計測した値 に問題がなく「大丈夫」と思っていても、実は十分に降圧されていないこと もあるのだ。
基準となる血圧は、家庭で測定したものを利用すべきである。測定の際 は、24時間血圧測定を利用するのが望ましいが、夜寝る前や朝起きてすぐ の血圧を測定することでも、代用はできる。
私たちが脳梗塞を発症したことがある患者245人を調査したところ、家庭 血圧での収縮期血圧(最大血圧)が135mmHg以上の患者では、脳卒中 再発は10倍以上、認知症の発症も20倍近いリスクが認められた。
血圧を下げ過ぎると「何となく体が重い」「ふらふらする」などの症状が表 れることもあるが、まずはしっかりと降庄してから、問題のない水準を探っ ていくようにしたい。
(談話まとめ:山崎大作=日経メディカル編集)

[出典:日経ビジネス、2007/04/16号、山本康正=京都第二赤十字病院 神経内科部長]

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