【納豆の健康効果を見直す】

今年1月7日に放送された「発掘!あるある大事典U」が、テレビの信用 を著しく傷つけたことで問題となった。同番組は、研究者の話を交えて納 豆のダイエット効果を紹介したが、研究者は「そんな話はしていない」と一 蹴。テレビ局のでっち上げが発覚した。だが、1月の納豆の売り上げは、 控造発覚後も前年の5割増しだったという(日本チェーンストア協会)。
食と健康は視聴者の関心が高い。新しい発見を華々しく見せれば、視聴率 が上がり話題にもなるだろう、という制作者の思惑が見え隠れする。
納豆に含まれる酵素(ナットウキナーゼ)は血栓を溶かす作用があり、血 栓性の病気予防に有効だが、一方では血液を凝固させるビタミンKも多く含 んでいる。血栓で脳の血管が詰まる脳塞栓症の治療薬であるワーフアリン は、このビタミンKを抑えて血栓をできにくくするので、脳塞栓症の予防に この薬を服用している人は、納豆を食べるべきではない。これが、現在最も 確実性のあるエビデンス(証拠)だ。
筆者も納豆の効用について書いてきたが、番組が放送されるまでダイエツ ト効果があるなどという話は聞いたことがなかった。すぐさまスーパーに走 った消費者も、時間がたつにつれて冷静になり、それでも血液をサラサラに する効果があるなら、ほどほどに食べようという心理になり、結果的に納豆 の売り上げ増になったのではないか。
「もっとスマートに」「もっと健康に」と、上を見ればキリがない。“納 豆控造事件”は、私たちに「足るを知る」見識の大切さを教えてくれた。

[出典:日経ビジネス、2007/04/09号、田野井正雄=医学ジャーナリスト]

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