【健康は「7分の勝ち」で】

甲斐の名将、武田信玄の戦略・戦術を記した『甲陽軍鑑』は、信玄の強さ が「7分勝ち」にあることを伝えている。信玄は言った。「6分・7分の勝ち は10分の勝ちである。8分の勝ちは危うく、9分・10分の勝ちは味方が大敗 する元である」。完勝すると相手を見下し、油断が生まれて、いずれ味方が 大敗することになる。
信玄の合戦哲学は、養生の極意にも当てはまる。健康であることに越した ことはないが、完全に健康であるよりは、体のどこかに少し悪いところを抱 えていた方が慎重になり、かえって長生きをするようになる。 1973年、米カリフォルニア大学のブレスロー博士は生活習慣と病気との 関わりを調査した。その結果、@適正な睡眠時間、A喫煙をしない、B適正 体重を維持する、C過度の飲酒をしない、D定期的に運動をする、E朝食を 毎日食べる、F間食をしない――これら7つの生活習慣のうち、実施して いる項目数が多い人ほど長生きであることを明らかにしている。
これらを実践している人とは、どんな人たちか。周りを見回してみると分 かるだろう。体にどこか不調を抱えている人たちが意外に多い。血糖値が高 かったり、血圧が高かったり、体に何か異常があると、たばこをやめたり、 酒を控えたり、ウオーキングを心がけたりするようになる。
信玄はこうも言っている。「40歳より内は勝つように、40歳より後は負 けざるように」。中年を過ぎたら、病気に勝たなくてもいい。負けなければ いいのである。

[出典:日経ビジネス、2007/03/26号、堀田宗路=医学ジャーナリスト]

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