【失った歯にインプラント】

虫歯がひどくなり、奥歯を1本抜くことになったNさん(47歳)。 従来の差し歯やブリッジではなく「インプラント」にしたいのだが、 手術は怖いし、術後も不安だ。
インプラント(人工歯根)治療とは、失われた歯の代わりに、顎の骨 に人工の歯の根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法を言う。
ブリッジのように周りの歯を削る必要はなく、残っている健康な歯に負担 もかからない。見た目や噛むことによる食感も、自分の歯とほとんど変わら ない。また、ブリッジや入れ歯と違い、自分の歯と同じように歯茎に噛む力が かかるので、歯茎が痩せることもなく、健康に保てるのもメリットだ。
インプラントの手術というと何だか痛そうで怖いイメージを持つ人もいる が、抜歯と逆のことをすると思ってもらえばいい。ただし、通常の歯の治療 よりも、厳重な滅菌下で手術を行う点は異なる。手術時間は、本数にもよる が30〜120分程度で、局所麻酔をかけるので術中の痛みはほとんどない。 不安や苦痛をより軽減するため、麻酔医による静脈鎮静療法(全身麻酔とは 異なる)を導入している医院もある。術後も「歯を抜いた時と同じような痛 みだった」と言う患者さんは多い。
最近10年間で、インプラントの素材や治療技術は進歩している。例え ば、従来は骨移植が必要であった顎の骨が薄い人には細くて丈夫な素材が、 また、骨が軟らかい人には表面に凹凸のある素材などが開発され、手術によ る負担も少なくなり、多くの人に適応できるようになってきた。
さらに、半年〜1年程度かかった治療期間も、この5年ほどの間に通常3 〜6カ月と短くなってきている。条件に合えば、抜歯した日にインプラント の埋め込みが可能な場合もある。また、歯肉切開をしない方法もあり、手 術時間、術後の腫れや痛み、出血も減らせる。インプラントを埋め込んだ当 日に仮歯をつけ、その日のうちに食事ができるという画期的な方法もある。
もっとも、骨租軽症で顎の骨が弱い人、重度の糖尿病や心疾患など全身疾 患を持つ人は、内科主治医などとよく相談したうえでインプラント治療を受 けることをお勧めする。以前は、歯周病の人には禁忌とまで言われていた が、現在は治療でコントロールされていれば、並行してインプラントの治療 を進めることも可能だ。
費用は治療の内容によって異なるが、健康保険は適用されない。例えば、 人工の歯を固定するのにも、スクリュー式とセメント式の2タイプあり、一 般的にセメント式は1本当たり20万〜40万円かかるのに対し、スクリュ ー式は40万〜60万円ほどになる。しかし、スクリュー式は、装着した歯の 部分を外すことが可能なので、メンテナンス性に優れている。
最後に、インプラント治療はすべての歯科医院で受けられるわけではない。 日本口腔インプラント学会はホームページ(http://www.shika-implant.org/) で認定医を公開しているので、これを参考にするのもいいだろう。
(談話まとめ:瀬川博子=日経メディカル別冊)

[出典:日経ビジネス、2007/03/26号、垂原 聡=湘南デンタルケアーインプラントクリニック 院長]

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