【地球のホメオスタシス】

アル・ゴア元米副大統領が出演している「不都合な真実」という映画が話題 になっている。映画は、今そこにある危機はテロだけではない、地球温暖化 こそ世界が危機と認識すべきことだと訴える。温暖化は、地球の生態系に深 刻な打撃を与えるが、人類にとっても脅威である。熱帯地方に特徴的な感染 症が温帯地域にまで拡大し、灼熱の太陽は皮膚ガンを増加させるだろう。
環境の悪化が人類に及ぼす影響を描き、大きな衝撃を与えたのは、科学者 レイチェル・カーソン氏の『沈黙の春』(新潮社)だったが、同氏はこの中で環 境の悪化はガンの誘因に多大な影響を与えると警鐘を鳴らした。さらにJ・ M・ジンメル氏は『ひばりの歌はこの春かぎり』(中央公論社)で、環境汚染 の実態を伝えようとした。
三者とも、今では誰もが知るように、地球の脅威は人間自身が作り出したも のだと主張した。
人間の内部環境は、一定のホメオスタシス(恒常性)を維持している。それ が崩壊した時、様々な病気が表れる。地球を一個の有機体と考えれば、そこ には人間と同様なホメオスタシスが存在するはずだ。地球のホメオスタシス を維持しなければ、地球を故郷にする人類に未来はない。
カーソン氏は、『沈黙の春』の最終章「べつの道」でこう語っている。「こ のまま高速道路を突っ走ってスピードに酔いしれるか、それとも、あまり人 も行かない、もう1つの別の道を行くか。別の道を行った時こそ、人間にも 最後の、そして唯一のチャンスがある」と。1962年のことである。

[出典:日経ビジネス、2007/03/12号、田野井正雄=医学ジャーナリスト]

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