【鳥インフルエンザに備える】

鳥インフルエンザは、インフルエンザウイルスA(H5N1)型が原因 で起こる病気だ。このウイルスは、普通は鳥類の間で感染が広がるが、まれ に人にも感染する。
1997年に香港で人への感染が初めて見つかって以来、世界保健機関 (WHO)によると、これまでに世界11カ国で272人が感染しており、そのう ち166人が死に至っている(2月6日時点の感染確定症例数)。ただし、症状 の軽い例で報告されなかったものを含めると、感染者数はもっと多いと考え られる。そのため、死亡率は50%程度と推定されている。
今までのところ、鳥インフルエンザが人から人へ感染した例は、タイやイ ンドネシアで数例と、極めて少ない。人への感染の大部分は、感染した鳥や その糞などにじかに接したことで起こっている。
鳥インフルエンザの症状は、肺など呼吸器系に出ることが多く、肺炎で死 亡する例がよく見られる。くしゃみや鼻水などといった症状は少ないこと も、人から人に感染しにくい理由の1つかもしれない。
とは言っても、その症状は普通のインフルエンザにとてもよく似ているの で、症状のみから診断はできない。最近、流行地域に旅行したかどうか、感 染者と接触した可能性があるかなどから推測し、血液検査で確実に判断する。 検査結果が出るまでには24時間かかってしまうため、米国疾病管理センタ ー(CDC)では現在、民間企業に助成金を出し、30分以内に診断できる検 査薬の開発を急いでいる。
治療には、抗インフルエンザ薬のうち、ウイルスが耐性を持たない、オセ ルタマビールとザナミビールが有効だと考えられている。ワクチンも開発中 だが、実用化には、まだしばらく時間がかかりそうだ。
言うまでもなく、鳥インフルエンザについては、予防が最も大切である。 現在、鳥インフルエンザが流行している地域は、インドネシアやエジプト、 ベトナムなどだ。そうした地域や、これまでに流行したことのある地域に旅 行をする際には、農場や食品市場に行くなど、生きた鳥と接触する機会は避 けること。鶏肉や卵は十分加熱したものしか食べないようにする。また、頻 繁に手を石鹸で洗ったり、アルコール入りのジェルなどで消毒することを心 がけたい。
一方、目の細かいマスクの着用は、感染予防につながるというエビデンス (根拠)はない。息苦しくて長時間は着けていられないので、マスクによる予 防は現実的ではないだろう。
インフルエンザウイルスは、少しずつ変化していくウイルスだ。世界の研 究者たちは、鳥インフルエンザウイルスも次第に変化し、人から人へと伝染 しやすくなるのも時間の問題だと予想している。
(談話まとめ:當麻あづさ=医療ジャーナリスト)

[出典:日経ビジネス、2007/02/26号、山田正治=ハワイ大学医学部、 アジア太平洋生物防衛・災害・紛争、 研究センター(米国ホノルル)代表]

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