【マウスで細胞から歯再生−中に血管・神経も】
マウスの胎児から歯のもとになる細胞を取り出して培養し、おとなの歯を再生させることに東京理科大の辻孝・助教授(再生医工学)らの研究グループが成功した。作製の成功率は100%で、中に血管や神経などもできた。臓器を人工的に再生させる技術につながると期待される。18日付の米科学誌ネイチャーメソッズ電子版で発表する。
(写真:腎皮膜下で再生させたマウスの歯。上部に複数の歯が発生している=辻孝・助教授提供)
胎児期にはさまざまな臓器や組織が、上皮細胞と間葉細胞という2種の
細胞の相互作用でつくられる。辻さんらはこれに着目。マウス胎児のあごの歯胚(しはい)から取り出した両細胞を酵素でばらばらにし、どちらも高密度の細胞塊にしたうえで、区分けしてコラーゲンのゲルに入れると、培養に成功することを突き止めた。
さらに、この細胞塊を50匹のマウスの腎皮膜下に注射。14日後に、すべてで歯の形成を確認できた。歯の再生研究は他にもあるが、作製率は20〜25%にとどまっていた。
また、生体内で育てた歯や、生体の外で人工培養を続けた細胞塊を、おとなのマウスの歯を技いた跡に移植すると、歯が高い頻度で生着した。この歯の内部には血管や神経のほか、クッションなどの役割を果たす歯根膜も再生できていた。
グループは今回、同様の手法で毛の再生にも成功した。今後、肝臓や腎臓などの臓器づくりも目指すという。
牛田多加志・東京大教授(疾患生命工学)の話
さまざまな臓器になり得る幹細胞を使った再生医療研究でも、実際に臓器をどう形作るかといった技術は確立されていない。今回は、未分化な複数種の細胞から複雑な立体構造を再生させる技術に道を開いた点で重要な意義がある。ただ、臨床応用できる技術開発には、さらに前進が必要だろう。
[出典:朝日新聞、2007/02/19]
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