【心身症に効く鑑真持参の竜骨の薬】

天平勝宝5(753)年、遣唐使の帰国に従い、唐の僧鑑真が来日した。5回に及ぶ渡航を試みたが、海難などでことごとく失敗し、弟子を失ったばかりか、自らも失明するという辛酸をなめた上での来日だった。唐招提寺を開き日本律宗の祖となるなど、鑑真がわが国で果たした役割は大きい。唐風の彫刻、書道、建築を紹介し、美術界にも大きな足跡を残した。
同時に鑑真は医薬にも詳しかった。盲目でも鼻でかぎ分けて薬物の鑑定を行い、いささかの誤りもなかったという。得意は石薬を使った処方で、当時としては第一級の医学であった。
石薬とは鉱物性薬物のことである。漢方で使われる生薬のほとんどは植物性のものだが、石薬のようなものも少なくない。鑑真は来日の際、様々な石薬を持参したと言われている。 その中に竜骨が含まれていたのは間違いないだろう。竜骨とは古代哺乳動物の化石のことで、石薬の代表的なものである。古代中国人は竜骨は竜の骨と考えていたわけだが、実際それがなんだったのか、長い間なぞだった。今では、その多くは古代のゾウやサイのなどの骨と見られている。
竜骨が不思議なのは鎮静作用があり、今で言う心身症によく効くことだ。竜骨を用いた有名な漢方薬に柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)があるが、これは神経過敏、ノイローゼ、不眠症、インポテンツ(性的不全)、うつ病などに著効を表す。薬局で手に入るので、関心のある人は試してみるといいだろう。
古代中国に、現代病の薬が既にあったのは驚くべきこと。鑑真は日本人の身も心も救うために来日したのだ。

(出典:日経ビジネス、2001/03/12号、堀田宗路=医学ジャーナリスト)

参考:
鑑真のことを知りたい方は、下記アドレスをアクセスしてみてください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%91%91%E7%9C%9F
http://homepage1.nifty.com/tosyo/kokuhou19.html

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