【脳を鍛える:インタビュー(5)】

※音読は脳のジョギング運動

――脳を鍛えるための音読の時間は、一日に10分間から20分間でよいのでしょ うか。
(川島)ええ、それで十分ですよ。ただし、毎日行なうことがポイントです。

――暗記したものを朗読しても効果があるのでしょうか。
(川島)それでは入力が欠けてしまいます。覚えている情報を引き出して出力する だけですから、音読よりも脳の働きは弱くなる。また、黙読であれば、入力して処 理はするが、出力がないので、この場合も脳の働きは減ります。

――つまり、脳を鍛えるには、音読が最も効果的であると。
(川島)肉体のウエルネスのためには、運動が一番だということがはっきりしてい ます。同じように、脳のウエルネスに取っては音読が「脳の全身運動」なのです。 まさにジョギングですよね。
 痴呆の高齢者にこれだけ効果があるのですから、一般の人たちにも間違いなく良 い作用をもたらします。音読が脳の機能を維持し、また発達させるのに役立つとい う結論に関しては自信を持っています。

――具体的にはどんなことに取り組めばいいのですか。
(川島)新聞を音読することをお奨めします。私たちの脳は同じ刺激を解析するこ とに飽きる傾向があります。だから毎日違った文字情報が入ってくる新聞は、格好 のマテリアルだと思っています。

――音読によって脳が活性化するというのは、いわゆる「頭が良くなる」ことと考 えていいのでしょうか。
(川島)頭の良し悪しは、「いかに前頭葉を上手に使うか」と考えられますから、ま た別の問題です。つまり音読によって脳を活性化することは、頭が良くなるための 器をつくる作業だと考えるといいと思います。
 毎日ジョギングをして筋力をつけたとしても、それで良い野球選手になれるわけ ではありません。基礎体力をつけた上で、目的にあったトレーニングが必要になり ます。同様に音読や単純な計算で基礎的な力をつけておかなければ、将来、創造的 なことはできないと思います。

――難しいことを毎日続けるのは大変ですが、音読ならば老若男女、誰でも簡単に 実行できるのが魅力ですね。
(川島)そうですね。また将来的には、脳のどの場所がどういう機能を司っている のかが明らかになれば、特定の脳の場所をトレーニングすることも可能になるでし ょう。これは、例えば言葉がしゃべれない症状を改善するために、リハビリテーシ ョンとして、そこを司る領域だけを刺激したり、活性化させる作業を促すことが比 較的簡単にできるようになると考えられます。
 ブレインイメージング研究の可能性は、ますます広がっていくと確信しています。 (完)

(出典:月刊致知、2002年7月号)

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