【腹四分】

昔から「空き腹に病気なし」とか、「腹八分(目)]とか言われ、過食を戒めていますが、作家の五木寛之さんは自著の中で、強烈なことを書いています。 さて、あなたなら「腹?分」にしますか。

五十歳を過ぎたころから、あまりものを食べなくなった。煙草も吸わなくなり、いつしかアルコールとも縁遠くなってきている。
好物といえばいなり寿司とかカレーライス。果物類もそれほど食べない。地方名産の珍味佳肴をいただいても、感心して眺めるだけ。
私の持論では、腹八分というのは三十代の大人のための基準である。
十代は腹十分でよろしい。二十代は腹九分。そして三十代から一分ずつ減らしていく。
四十代で腹七分。五十代は腹六分。六十代にはいれば腹五分といったところ。 七十代では腹四分というのが私の養生法だ。
八十代では腹三分。九十を過ぎれば腹二分で十分だろう。百歳以上は腹一分。あとは霞を食って生きるべし。
腹十分のころ、いや、せめて腹九分の二十代のころにでも、食料品のお歳暮をいただきたかったとしみじみ思う。
私は目下、腹四分の世代である。したがって毎日、およそ一食半の食事で過している。
朝は寝ているから、もちろん抜き。午後三時ころに蕎麦かうどんで軽く半食。夜はちゃんと食べる。それでもちょうどいいのだから、私のスライド式食事法は正解なのだろう。

(出典:「新・風に吹かれて」五木寛之著、講談社)

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