【娘の笑いが母に移り糖尿病が改善】

「先生、笑うってすばらしい治療法ですね」。今年も人間ドックに来たMさん(41歳女性、事手伝い)が開口一番言った。去年、下戸なのに肝臓障害があり、動脈硬化も同世代の女性よりも進行していた人だ。
 Mさんは4年前仕事をやめ、糖尿病で寝たきりの母親の看護を一人で続けている。ほぼ24時間体制でトイレにも寝床からいちいち起こす。母は自分の介護のために嫁にも行かず無職の娘が不憫で、「もう死にたい」と毎日泣く。それが何よりMさんにはつらい。泣く母を見て「これがいつまで続くの」と毎日うつうつとしていた。
Mさんの病的所見はストレス性障害だ。優先したのは精神的にアップさせること。テレビやビデオ、本に至るまで笑えるものを選んでもらい、面白い時は大声で笑うよう指導した。米国のジャーナリスト、ノーマン・カズンズが倒れた時、病室に笑えるビデオや本をしこたま置き、医師から重病と言われたのを克服した例もある。
Mさんの驚きは自分より母親の変化だった。Mさんが大声で笑うと目のほとんど見えない母親も笑い声を聞き一緒になって笑うと言う。まるで娘が人生を楽しむのを喜ぶかのように。しょっちゅう母娘で笑って半年経ったら、母親の糖尿病が改善しており、医師から薬を減らすよう指示された。
笑いによる免疫力上昇の報告はあるが、寝たきりの人の病状改善の報告はない。介護施設で「笑うプログラム」を設け、職員と入所者が一緒に笑う価値はある。もちろんMさんの検査結果は見事に改善していた。

(出典:日経ビジネス、2001/10/01号、安岡博之=南赤阪クリニック院長)

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