【豆腐はガンを退ける】

天明2(1782)年、江戸でベストセラーになった料理本がある。『豆腐百珍』(何必醇著)という100種類の豆腐料理を6等級に分けて評価し、その作り方を紹介した本だ。この本が良く売れたので、その後、二番煎じの“百珍物”の料理本が続々と出版されたほどだ。 
豆腐は中国漢時代の淮南王劉安が発明したと言われている。日本に伝えられたのは奈良時代だが、その食文化が花開いたのはやはり江戸時代になってからである。
豆腐と日本人の付き合いは、このように古いだけではない。これほど日本人の健康を守ってきた食品もないだろう。例えば、豆腐などの大豆食品を食べると、その食物繊維が腸内で分解されて、イソフラボンという植物ホルモンを生じる。実はこれが男性の前立腺ガンや女性の乳ガンの予防に大いに役立つことがわかってきた。
日本人とフィンランド人の前立腺ガン、乳ガンの死亡率を比較すると、フィンランド人の方が2倍以上も高くなる。そして、両者の血中のイソフラボン濃度を比較すると、日本人はフィンランド人の40倍も高い値を示した。前立腺や乳房のような男性や女性に特有の臓器にできるガンでは、性ホルモンの分泌がその発生を左右している。イソフラボンはこうした性ホルモンに干渉するので、ガンの発生を予防するのではないかと見られている。
国立がんセンターの調査でも豆腐などをよく食べている地域ほど、乳ガン卵巣ガン、大腸ガンによる死亡率が低いことが判明している。また、豆腐に含まれる大豆サポニンにも抗ガン作用がある。

(出典:日経ビジネス、2000/12/04号、堀田宗路=医学ジャーナリスト)

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