【首を守って血圧を抑える】

女性の首には色香が漂う。井原西鶴の『好色一代女』に出てくる美女の条件も「首筋立ちのびて」とある。髪型がアップになった江戸時代の後期から、うなじは女性の美しさの大切な部位となった。
武術家にとって首は急所だ。食道、気道、脊髄、頸動脈などがひしめく首は、人体で最も無防備な部分だ。剣術や柔術では、ここに突きや当て身が入ると「即倒、即死」する。剣道で使う防具の「面」には喉のところに、突きを防ぐ垂れがついている。よく見ると中央部に×印の縫い目があり、ちょうど喉仏の高さで突きの目標になる。
冬場の健康を守るためにもやはり欠かせないのが首だ。どんなに寒い時でも首筋はとても温かい。これは皮膚のすぐ近くを太い血管が走っているからだ。ここをむき出しにしていると、体からの放熱が大きくなり、交感神経を緊張させて血圧が急上昇する。気温が急激に低下すると、血圧が上昇して脳卒中や心筋梗塞が多発する。その際、マフラーでしっかりと首を守っていると、血圧を防いで病気から体を守ることができる。
ウサギの実験で、頭、首、胸、腹の各部分を0度の氷水で冷やしたところ、首や胸を冷やすと血圧が30%も上昇したという。血圧の高い人は、冬場は外出時には必ずマフラーを着用して、首を保護することを忘れないようにしたい。マフラーはぴったりと巻かないで、少しゆるく巻くのがコツだ。首筋とマフラーの間に少し空間を持たせると、中に含まれる暖かい空気の熱伝導率が小さくなるため保温効果が高くなる。

(出典:日経ビジネス、2003/12/08号、堀田宗路=医学ジャーナリスト)

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