【勝海舟の隠れた健康法】

晩年の勝海舟は、一日中座敷に座りっぱなしで、朝から晩までひっきりなしに訪れる客の相手をしていた。これが毎年、毎月、毎日続いた。あまりにも外へ出ないので、周囲の者はいつも海舟の健康の心配をしていた。
ある時、著名な医者が「外に出て運動でもされてはいかがか」と勧めたが、「そんなことは馬鹿にお言いなさい。俺の体には運動はいらないよ」と海舟はいった。全く体のことには頓着していないかのようだった。
それでも海舟は至って元気だった。75歳という年齢にもかかわらず、冬でも火にあたることはなく寝る時はいつも裸だった。若い頃剣術の修行で鍛えていたとはいえ、これだけの健康はいつまでも保てるわけがない。
実は海舟にはある健康法があった。しばしば「刺絡」を行っていたのだ。刺絡とは、鍼療法の一種で、手の指先などのツボから悪い血を抜く療法のことだ。海舟は煙草盆の引出しにいろいろな小道具とともに、必ず鋭利なナイフを入れておき、これで指先を少し切って刺絡を行っていた。これで、運動をしなくても全身の血液循環がよくなり、健康を保てたのだろう。
刺絡は危なくて勧められないが、手の指先をよく揉めば刺絡と同様の効果が得られる。1本1本指先を丹念に揉んでいると、手がポカポカと温かくなり、たがて全身の血液循環もよくなっていく。
また、手のそれぞれの指先にはツボの中でもとりわけ大切される「井穴」がある。指先をよく揉むと、これらの井穴が刺激され、全身を健康にする。朝、起き抜けに試すといいだろう。

(出典:日経ビジネス、2001/01/29号、堀田宗路=医学ジャーナリスト)

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