【不気味な名の薬草】

「オトギリソウ」という薬草がある。漢字で弟切草と書く。どうしてこんな不気味な名前がついたのか。
平安朝の頃、晴頼という鷹匠がいた。腕が抜群で入神の技を持つといわれていた男である。晴頼は鷹が怪我をすると、ある薬草の汁をつけてたちまち治すことができた。彼はその薬草の名前を秘密にし、誰に聞かれても教えることはなかった。ところが、弟がその名前を恋人に漏らしたため、怒り狂った晴頼は弟を切り殺してしまった。それから、この薬草は弟切草と呼ばれるようになったという。
弟切草はオトギリソウ科の多年草で漢方名は生連翹(しょうれんぎょう)。丈は20〜60cmほどで、茎は丸く直立し、葉は2枚ずつ茎を抱くように対生している。夏の盛りに1cmほどの5弁の黄色い花を咲かせ、8〜10月に赤褐色の果実をつける。果実をつけた葉茎を根元から刈り取って日干しにし、生薬とする。
オトギリソウ10〜20gを500ccの水で半量になるまでとろ火で煮詰める。これを切り傷、打ち身、腫れ物などに塗る。浴剤として使うと、リウマチ、神経痛、通風などの鎮痛に効く。夏のような暑い時期には、冷房などで体を冷やしてリウマチや神経痛が悪化しやすい。こんな時期こそ、オトギリソウの薬湯がいい。
気をつけたいのは、この薬湯に入った後直射日光にあたると、ヒペリシンという成分の影響で肌が黒くなりやすいこと。ひどいときには皮膚炎を起こす。風呂から出る時には、よく洗い流すことが大切だ。オトギリソウは日本全国に分布しているが、漢方薬店で簡単に手に入る。

(出典:日経ビジネス、2001/08/6・13号、堀田宗路=医学ジャーナリスト)

参考:
オトギリソウの写真を見たい方は、下記アドレスをアクセスしてみてください。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/otogirisou.html

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