【健康によい赤い色の威力】

天保2年(1831年)、戯作者滝沢馬琴の孫2人が、次々に痘瘡(天然痘)にかかってしまった。
馬琴は薬の製造販売を行い、医学に通じていた。そこで、孫2人に医薬を用いて手当をした。そのいっぽうで、奇妙な行動を取った。赤い木綿で着物や頭巾を作らせ、痘瘡除けの赤絵を張って、孫たちの周りを赤色ずくめにしてしまった。
気が動転したからではない。当時は赤色で覆うと痘瘡が軽くなり、痘痕も残りにくくなると信じられていたのだ。そのため、患者の衣服は勿論のこと、寝具、蚊帳、屏風、食物に至るまで赤色にされた。子供なら玩具やお菓子、絵本(絵草子)まで赤色だった。
これは中国医学の教えによるものだ。だが、今の医学から見ても理にかなっている。1894年、デンマークの医師フィンセンによって、痘瘡が赤外線によって悪化しやすく、それを遮る赤い色を使うと悪くなるのを防ぐことが確かめられている。
一方、動脈硬化、心筋梗塞、ガンなど、多くの病気に活性酸素という反応性の高い酸素分子がかかわっていることがわかっている。この獰猛な酸素は、赤い色素に弱いのだ。
そのため、古くから健康に良いとされる食物も赤い色が濃い。例えば、赤や緑の鮮やかな野菜や果物は体を健康にする。スイカ、ニンジン、ピーマン、ブロッコリーなどがそうだ。サケ、キンメダイ、タイ、メバルなどの身や皮の赤い魚も体にいい。
最近赤ワインが健康に良いとされるのも、要は色が赤いからだ。

(出典:日経ビジネス、2000/09/11号、堀田宗路=医学ジャーナリスト)

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