【手の震えは筋力の低下?】

治療より養生が大事、とずっと思ってきた。
戦後60年ちかく、頑固に病院に近づかなかったのは、べつに信念や偏見あってのことではない。それはまったくの幸運にすぎないと、つねに感謝しながら生きている。
しかし、老化は逆らいがたくやってくる。人間にもエントロピーというものは、あるのだろうか。
先ごろ、なんとなく手が震えることに気がついた。こまかい仕事をしていると、指先がこきざみに震えるのだ。
家人にそれを言ったら、
「気のせいでしょ」
と、一笑に付された。
「いや、本当に本当の話。このところずっと続いているんだ」
「ちょっと両手を上に向けて、前のほうでそろえてみて下さい」
言われるままに両手の掌を上に向け、そろえて前に出す。古い表現でいうなら、貴重なものをおしいただくような格好だ。
その上にティッシュペーパーをフワリと一枚のせられた。
「こうするとよくわかるかも」
「おっ、これは不思議。どんどん震えだしたぞ」
軽いティッシュペーパーが波うって震えている。手だけ眺めているとあまりよくわからないのだが、こうしてみると震えがはっきりと確認できる。けっこう立派な震え方だ。コックリさんじゃないが、そのうち次第に大きく揺れはじめた。
ハラリとティッシュが床に落ちる。
「うーむ。これは重症だ。どこか体に異常が発生したにちがいない。手の震えという形で、体が信号を送ってきてるんだな」
などとわかったような顔でうなずきつつ、心のなかで「メメント・モリ」などとつぶやく。
(中略) 手の震えは、手の運動を続けていたら、いつか治まった。たぶん老化による筋力の低下が原因だったのではあるまいか。

(出典:「新・風に吹かれて」五木寛之著、講談社)

参考: 手の筋力維持は、握力運動が良いのではないでしょうか。ウォーキングをしながら、50〜100回の握力運動をし、暫く休んでまたするという繰り返しをします。 この繰り返しを5分間隔で行うと、30分間では300〜600回できます。
最初は疲れますが、50回くらいから始め、3日も続ければ慣れてきます。是非実践してみてください。

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